- 独立開業の手続と費用
- 会社設立の手続と費用
- 税理士と会計士の違い
- 税理士が行う業務内容とは?
- 個人事業と会社経営、どちらが有利?
- 青色・白色確定申告の違い
- 確定申告は税理士に依頼?それとも自分で?
- 個人事業と会社経営の税金等負担額比較
- 融資・資金繰りについて
- 黒字なのに手元にお金が残らないのはどうして?
※なお、解答は作成時点での数値になりますので、改正や随時変更後の最新情報ではない旨、ご理解ください
※なお、解答は作成時点での数値になりますので、改正や随時変更後の最新情報ではない旨、ご理解ください
個人事業主として開業 | |
---|---|
個人で事業を始めるのに手続きは必要? | 実は特に手続きは必要ありません。 ただし、喫茶店や不動産屋など許認可や資格が必要な事業を始める場合は、保健所・各種団体等への届出が必要です。 個別に職業や仕事の種類について、ここでは触れませんが、 仕事をするのに専門資格や届出が必要な場合は、 必ずその資格を取ったり届出を出しておきましょう。 |
税務署への開業届けは? | 開業後2ヶ月以内あるいはその年の3月15日までの どちらか遅いほうの日付までに開業届けを提出する必要があります。 確定申告の際に「青色申告」を選択する場合には、 開業届けと青色申告の届けを出さなければなりません。 独立して仕事を始め、確定申告で青色申告をしたいと思っている方は、 届け出をしておくべきでしょう。 |
事業計画書の作成 | 事業の内容を第三者に客観的に見てもらう為に必要な書類ですから、 融資を受ける場合などは作成する必要があります。 融資等を受ける予定がなければ、特に必要ではありません。 ただし、現状や将来の経営状態を把握する為に、 ある程度の計画書を作成しておいたほうが良いでしょう。 |
開業後は? | ・新規顧客の開拓・広告宣伝活動 ・既存顧客のケア ・取扱い商品の選定・価格やサービス内容の決定 ・請求書・納品書や領収書等の作成・発行 ・売上代金の回収 ・仕入先や外注先の確保 ・経費管理・各種帳簿作成 ・設備投資計画 ・確定申告や納税手続き ・従業員の雇用確保、給与に関する管理や手続き ・社員教育 ・資金繰り・資金調達 ・利益・経営計画 ・事業の効率性追求・IT化等 これら「事業活動」に関連する仕事を、どこからどのように手をつけていくのかも含めて全て自分自身で決めていかなければなりません。 |
開業にかかる費用 | ・開業時に必要な設備投資や商品仕入・消耗品等に関する実費以外、 特に発生しません。 |
会社設立の流れ | |
---|---|
主なステップ |
|
会社設立費用 (一般的小規模な会社の例) |
法定費用 定款認証手数料等 52,000円(税抜) 定款印紙代 40,000円(税抜) 登録免許税 150,000円(税抜) 謄本等取得費用 4,000円(税抜) 法定費用合計 246,000円(税抜) ※電子認証システムにて定款認証の場合、印紙代4万円は不要。 謄本取得費用= 登記事項証明書(@1000円)×3通、 印鑑証明書(@500円)×2通分。 (登記完了後) 上記のように、会社設立には多くの税金等(法定費用)が発生します。 登記の際には、会社の代表印が必要になりますので、 会社の各種印鑑等も含めると30万円程度掛かることになります。 |
税理士法 第1条 (税理士の使命) |
税理士は、税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、 申告納税制度の理念にそつて、納税義務者の信頼にこたえ、 租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。 |
---|---|
公認会計士法 第1条 (公認会計士の使命) |
公認会計士は、監査及び会計の専門家として、独立した立場において、 財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、 会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、 もつて国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする。 |
税理士と会計士の違い | 税理士と公認会計士は、試験内容、資格・制度の違いはもとより、 内容も本質は異なります。 一般的に、税理士は「税金」の専門家、公認会計士は 「監査・会計」の専門家といわれています。 昨今においては、両者のボーダーレス化が進んでおり、 税理士であっても会計原則は知らなければならないですし、 公認会計士であっても税務を知らなければならなくなっています。 ただ、資本金5億円以上または負債額20億円以上の大企業の場合、 公認会計士による監査を受けることが法律で義務付けられています。 監査業務は公認会計士の業務範囲であり、ほとんどは監査法人が行っています。 中小企業の場合、公認会計士も税理士業務を行っていますので、 専門・得意分野があるにせよ業務内容に大きな変わりはないといえます。 |
---|
税理士の行う業務内容 | |
---|---|
主な業務内容 |
|
個人事業と会社経営の税金等負担額比較 | ||
---|---|---|
個人事業の場合 | 法人(会社組織)の場合 | |
開業資金 | 少額でも可能 | 設立時に法定費用等がかかる |
設立手続 | 自分で簡単に出来る | 煩雑で費用もかかる |
社会的信用性 | 低い | 高い |
資金調達能力 | 融資はやや困難 | 出資や融資など、比較的資金調達がし易い |
責任 | 万一の場合、個人の全財産で無限責任を負う | 出資額を限度に有限責任を負う(ただし融資等に際し連帯保証を行う場合あり |
経理処理 | 比較的簡易 | 複式簿記による帳簿の作成が必要であり複雑となる |
税務上の違い | ||
(1)経営者の給料 | 認められない | 役員報酬として経費となる |
(2)家族の給料 | 青色申告は専従者給与・白色申告は最高86万円 | 適正額の給料は経費となる |
(3)退職金 | 本人・専従者分は経費とならない | 本人・家族分とも適正範囲内で経費となる |
(4)減価償却 | 強制償却 | 任意償却 |
(5)交際費 | 制限はない | 一定額の制限あり |
(6)生命保険料 | 必要経費にはならない | 定期保険は必要経費 |
(7)青色申告 | 青色申告特別控除65万円 | 税額控除や特別償却が可能 |
(8)欠損金の繰越し | 青色申告は3年間繰越し可能 | 9年間繰越し可能 |
税負担額 | 一定額以下の所得の場合は有利 | 一定額以上の所得がある場合は有利 |
赤字の場合、税負担なし | 赤字でも一定額の地方税あり(最低7万円) | |
開業、設立時消費税 | 暦年で原則2年間納税義務なし(例外有) | 原則事業年度2期分納税義務なし(例外有) |
決算期 | 毎年12月31日 | 自由に選択 |
社会保険 | 5人以下は任意加入 | 強制加入 |
人材の確保 | 比較的困難 | 信用性が増し人材を確保しやすい |
税理士への報酬 | 低価格 | 個人事業の場合より高くなるのが一般的 |
インターネットショップ | 大手サイト登録出店は困難 | 大手サイト登録出店しやすい |
その他 | ー | 事業承継しやすい |
小規模経営で売上がそれほど多くない場合は、
税金等の面でやはり個人事業形態にしたおいたほうが有利であるといえるでしょう。
会社を設立するのであれば、それが対外的信用の為なのか節税対策なのか、
メリットとデメリットを比較し熟考したうえで目的を明確にする必要があります。
青色申告をすることにより受けられる特典 | |
---|---|
特典その1 | 青色申告特別控除 65万円(簡易式簿記は10万円) |
特典その2 |
青色事業専従者給与 (生計を一にしている親族等に支払う給与を必要経費にできる。 白色でもありますが、金額が小額となります。) |
特典その3 | 純損失(赤字)の3年間の繰越 |
他にもありますが、主なものは以上です。
ここで青色申告と白色申告の大きな違いとなるのは(1)番です。
複式簿記による会計帳簿をつけるだけで、毎年65万円の控除を受けられるわけですから
所得税・住民税を考えると大きな節税になります。
消費税がかからない小規模事業者や経理事務が苦手な方の場合、
経理事務が比較的簡易な白色申告で良いケースもあるかもしれませんが、
税理士の立場からすると、事業主自身の経営現状把握の為にも青色申告をお勧めします。
税理士を顧問に付けることは義務ではありません。
一般的に、会社組織(法人)の場合は税理士顧問が必要と思われますが、
中小規模の個人事業主で経理事務が煩雑でなければ、
税理士に申告や決算の依頼をせず、
自分で経理・確定申告をおこなっても構わないと思います。
税理士へ依頼した場合のメリット |
・経理事務の煩雑さが軽減される ・節税対策を講じることができる ・税金に関することだけでなく、経営に関連する様々な情報を知ることができる ・経理・給与事務や確定申告に要する時間が半減する ・経営に関して分からない事があるとき、相談役がいるため安心できる ・税務調査が入った場合、税理士がサポートしてくれる |
---|---|
税理士へ依頼した場合のデメリット |
・正確な会計帳簿・確定申告書を作成するため、 経理事務に関して細かい作業が必要な場合がある ・毎月または決算時に顧問報酬が発生する |
個人事業者(従業員あり、国保加入の場合) | |
---|---|
所得税 | 課税所得×5~40%の累進課税 |
住民税 | 均等割額+課税所得金額×10%(市民税6%、県民税4%) |
事業税 | 事業主控除290万円控除後の課税所得金額×5% |
国民健康保険 |
均等割額+所得割額 (世帯ごとに計算され、世帯主が納付・医療分53万円介護分 8万円の上限あり) 年度や市区町村により保険料率の算定方法は異なります (名古屋市の場合:均等割額43,381円・所得割料率1.07) |
国民年金 | 1人につき月額14,100円 |
労働保険料 | 労働者の賃金総額×0.45%(一般的業種の場合) |
雇用保険料 | 被保険者の賃金総額 ×1.5%(事業主負担分0.9%+被保険者負担0.6%) |
会社組織 (名古屋市の小規模一般企業:従業員あり、社会保険加入の場合) |
|
---|---|
法人税 |
所得金額年800万円以下:22%、 年800万円超の場合:30% |
法人市民税 | 均等割50,000円+所得割(法人税額×12.3%) |
法人県民税 | 均等割20,000円+所得割(法人税額×5%) |
法人事業税 | 所得金額×5~9.6%の累進課税 |
社会保険料 | 健康保険料: 被保険者の標準報酬月額×8.2% (介護保険非該当者の場合)を会社と被保険者で折半 厚生年金保険料: 被保険者の標準報酬月額×14.996%を 会社と被保険者で折半 |
労働保険料 | 労働者の賃金総額×0.45%(一般的業種の場合) |
雇用保険料 | 被保険者の賃金総額×1.5% (事業主負担分0.9%+被保険者負担0.6%) |
役員分給与 | 所得額に応じて給与所得控除あり、 控除後の所得税・住民税は個人事業者と同様 (個人事業税はなし) |
※課税所得=所得-扶養控除等控除項目
一律の基準はなく事業者の諸状況により判断することになりますが、
私の場合は個人事業者の合計所得金額が年間600~800万円を超えてきたとき、
税金その他の面も含めて法人化の提案をしています。
また、会社組織の場合、社長が5,000万円も6,000万円も給与を受取ると、
所得税率の上限が法人税率の上限より高いため、
個人で高い税金を払うことになります。
すなわち、会社組織の場合には、
会社として支払う税金と社長が受取る給与に対する税金のバランスを考え、
両方を考慮しなければなりません。
家族や親族の扶養状況、事業従事割合・給与も関係してきますので、
年末調整時の源泉徴収票や確定申告資料を参考に総合的な観点から、
税負担額(法人税等と個人税率)を比較検討することになります。
税務面だけを考慮するなら、社長の給与額が2,000万円あたりから、
個人の給与として税金を払うのか、会社で税金を払うのかを検討しています。
※ 上記は、平成20年1月1日現在施行されている法律等に基づく
小規模経営者の一般的例示となります。
事業規模(資本金額・支店数等)や事業内容・市町村等により
上記とは異なる税率が定められている場合があること・分かり易く表示するため
省略部分があることにご留意下さい。
※ 法人実効税率 = {法人税率+(法人税率×住民税率)+事業税率} / 1+事業税率
資金調達が必要な場合の、
主な融資先・融資を申し込む際のポイントを下記にて紹介致します。
主な資金融資先 | |
---|---|
①創業時 | ・国民生活金融公庫(創業融資制度の活用) ・保証協会(創業者融資制度の活用) |
②開業・会社設立後 |
・国民生活金融公庫 ・保証協会 ・民間金融機関(銀行) ・その他経営者支援機関の利用 |
融資を受ける際の主なポイント
①「創業計画書」「事業概況書」の内容・数値・根拠が明確に記載されているか?
②借入額は、返済可能な金額か?返済計画は現実的な数値か?
③自己資金の有無・金額
④保証人・担保の有無
⑤運転資金それとも設備投資のため?使用目的は?
⑥開業後の借入であれば、これまでの財務及び返済実績や税金滞納の有無
※ 融資を受ける際のポイントは、この他にも数多くあります。
借入の申込みから面接・融資決定に至るまで日数がかかりますので
余裕をもって準備し申込みを行って下さい。
事業をしていると、手元に資金が残っていないのに所得が発生し、 税金の支払い等で資金繰りが困難になる場合があります。 これは、現金の収支≠事業の損益(収支と損益は異なる)であることに起因します。 原因となる主な例を挙げると以下のとおりです。
原因となる主な例 | |
---|---|
①高額の資産購入のケース |
事業年度末に500万円の資産を購入したとすると、 (収支) 現金500万円の減少 (損益) 資産は税務上の耐用年数に応じて月割りで費用計上のため、 耐用年数が長ければ当期の経費になるのは数万円。所得が発生 |
②売上の未収入金分(売掛金)が多額であり、経費等の支払い(買掛金)は完了しているケース |
売上1,000万円、売掛金700万円・仕入500万円、買掛金0円 (収支) 現金300万円入金、500万円出金で現金200万円の減少 (損益) 売上1,000万円-仕入500万円で所得500万円発生 |
③商品を仕入れたが、在庫が多く残っているケース |
仕入500万円、在庫400万円 (収支) 現金500万円の減少 (損益) 材料等は、使用・販売した時点で経費になるため、 在庫分は経費にならず、経費計上できるのは100万円。所得が発生 |
④事業開始後、金融機関等へ借入金の返済をしているケース |
返済額200万円 (収支) 現金200万円の減少 (損益) 借入金の元本返済は経費にならない・ 借入利息部分のみ経費計上。所得が発生 |
上記の場合のいずれも、事業者の手元には資金が残らないのに、所得が発生し納税しなければなりません。
損をしている訳ではなく、収支と損益の間に期間的なズレが生じるからです。
これらを考慮しながら資金繰り計画をたて、事業をするうえで金銭的な余裕を生み出す必要があります。